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2006/10/19

『月曜日よりの使者』〜ちょっとメモがわりに〜

時間をたっぷり使える日曜日に工房で一人
『佐野実のラーメン鉢/塩鉢』の5度目の微修正。
重さ、かさなり、美しさ、高台の作り、渕作り
内側のライン、外側のライン、
美味しく食べて貰えるか・・・などなど。
つい「もっと、もっと」となるのが
『陶山社中』の5軒の窯元である。居心地がよい。
「そんな細かい部分にこだわっても意味が無い!」
という意見が出た窯元共同製作もあった。
そう言えてしまえる窯元は少ないとは思うけど
これが『産地の現状』なのかもしれないとも思う。
様々な『窯元の在り方・モノ作りへの姿勢』があって当然だし、どれかが間違ってる訳でもないと思う。
ただ、自分としては、有田の方言/業界用語で言う
『しゃーくにん(職人・細工人)』でありたいと想う。
そんな事を、作業の間に行った九州陶磁文化館の
『鍋島展』を観ながら「すげーすげー」とつぶやいたりしつつ
再確認してた。
有田の先人陶工が作ったこんなに凄いの見せられては
作り手として「細かい部分にこだわっても意味が無い」
なんて言ったらバチが当たるなあ・・・
鍋島展
touetsukama
2006/10/12

『その男、凶暴な甘えん坊につき』

黒いデカい仔犬が「窯場の用心棒」に
なって一か月が経った。
名は“黒エビス屋”Blue'sと、屋号も付けた。
「ブルース」は生家で呼ばれてたそのまま。
尋常でない「甘えっぷり」と
台風の様な「暴れっぷり」である。
彼の「天敵」である掃除機は
報復に遭い、二度もコードを噛み切られた。
ただ、日々少しずつだけど
生きるための知恵(旨いモノを貰う知恵?)を
身に着けていく姿には
ちょっと感動すらしてしまう。
不安げな様子でこちらをチラチラ見ながら
トイレシートでトイレが出来た朝には
つい抱きしめてしまった。
ブルース
touetsukama
2006/09/18

『窯跡と生活』

窯元が集まり、窯跡保存について
話し合いをしていると、つい、
「自分達はイイ事をしてるんだ」
思ってしまいそうになる。
図々しくなったりもする。
「計画されている道路をどうするのか」は
近隣の住人と町・県の行政の事で、
俺ら窯元が口を出せる話では無いと思う。

窯元が言ってもいいのは
「この先人陶工の遺産を残してほしい」
それだけだと思うのだけど。
物原3
touetsukama
2006/09/08

『写真は嘘をつく事がある』

伝統産地再生への取組みが紹介された本が届いた。
『究極のラーメン鉢』の記事に補足すると、
商社が決まったのは「モノ作り後」の販売からであり、
窯元が思う「産地の危機感/価格や流通」に対して
理解して頂いた商社に販売をお願いした。
窯元のこの危機感が『地元プロデューサー』的役割をした。
それと、NHKの浜田さん、商工会議所の川原さん
の存在が大きかった。

ふと、美大生の頃に読んだ本に
「写真は嘘をつく事がある」
と書いてあった事を想い出した。

この本の写真が嘘だと言う話ではなく、
およそ三年が経ち、忘れないうちに
『流れと実感』を 裏話を含め、
近いうちにここに書いておこう。 長くなるけど。
それにしても、陶山神社でのメンバー集合写真に
「究ラー鉢プロジェクトArita」を一番愛した窯元の、
あの笑顔が無い(他界され)のがなんとも言えず寂しい。
『メイド・イン・ニッポン日本の資産「技」を生かす』
touetsukama
2006/09/05

『蕎麦』

畑仕事が大好きな祖母に以前、
「蕎麦打ちをやりたいから
畑で蕎麦を栽培してくれない?」
と、頼んだ事があったが
「窯ヤキ(窯元)の畑仕事は
穫ってすぐ食べれるモンにせんば。
そがん手間ばカケる時間のあるなら、
ヨカ焼きモンば作らんば」と断られた。
蕎麦を食べる度に祖母のその言葉を憶い出す。
祖母は窯元(平戸松山窯)から窯元に嫁いで来た。
祖父がロクロを挽き、職人さんが絵付けをし、
祖母が飾りの 彫刻、釉掛けをしていた。
生活の真ん中にいつも、
土の乾燥具合や窯の温度の事が あったんだろう。



水指し
touetsukama
2006/08/21

『物原/モノハラ』

【物原】は窯跡周辺にある、焼き損じた製品やハマなどの
窯道具の捨て場の事。
朝から歴史民俗資料館の学芸員さんと
窯跡群を見に行った。
道路建設予定地から
江戸前期〜明治期までの6基の窯跡が
かなり良い状態で出たから行った。
物原の幾重にも重なる 『地層/年輪』のチカラに圧倒された。 積み重なった『時間/伝統』の上に
『今』があるという事を 一目で伝えてくれる。



物原
touetsukama
2006/07/25

『窯道具/ハマ』 〜ロクロと大雨と錦鯉〜

【ハマ】は焼成中の器の歪みを防ぐ焼台のこと。
小学生の頃は夏休みになると祖父に
「ハマば100個。 ロクロば挽いてから遊びに行け」
と言われ、早く釣りに行きたくてソワソワしながら
ロクロを挽いていた。
特に、最近の様な大雨の次の日には、
近所にある天神森窯跡の側を流れる小さい川で
丸々とした錦鯉が釣れたので、
ロクロの前で『心ココにあらず』だった。
約束の数が作れなかった言い訳に、
自転車の籠から尾ビレのはみ出した錦鯉を
祖父に自慢した事もあった。

あの頃は無邪気に、錦鯉が釣れたことを喜んでいたのだが、
今思えば、小川の上流にある、
『柿の実の色の絵付け』で有名な窯元の池の鯉が、
大雨で川に飛び出したものだったのかもしれない・・・



touetsukama
2006/06/20

『日曜日よりの使者達』 その弐

日曜の夜、母校のすぐ傍にある競輪場が無料開放され、
日本vsクロアチア戦のパブリックビューイングがあった。
高校の授業中に競輪の鐘の音は聞いていたけど、
中に 入ったのは初めてだった。
スタッフの方の頑張りのお陰で楽しい時間だった。
おまけに試合後のインタビューが
地元TV局の昼と夕方の ニュースに出てしまい
「テレビ見たよ!」の反響が、
本業でメディアに出た時よりもあった。(苦笑)
TV中継で観るドイツの風景が懐かしく、
チェコの陶芸家さんからの プラハでの展覧会&シンポジウムへの参加の誘いを 断らずに行っとけば良かった、、、


『パブリックビューイングin武雄』 http://city.takeo.lg.jp/contents.cfm?code=1-2-62
touetsukama
2006/05/25

『三輪空』 〜陶交会LOHAS展考 その参〜

有田の水はおいしい。だから、酒もうまい。
燃料や天然資源である『陶石』を大切に使い、次世代へ有田焼 を残したいと想う。CO2削減や環境配慮を考え、使って安全安 心な『器』作りで自分自身が気持ち良く暮らしたいと、ただ想う。 いつまでも美味しい酒が呑みたいと想う。 (で、その合い間にチラリと夜中の窯の火の様子を見に仕事場へ降りる)
基本は永く使って貰えて気持ちの良い『いい道具』を 作る。 そんな『エゴ』な『エコ』でイイような気がする。

PS/取組みに御理解御協力を頂いた岩田屋様には心より 感謝いたします。

touetsukama
2006/05/20

『三輪空』 〜陶交会LOHAS展考 その弐〜

窯元十数軒による「モノの共同開発」以上に今回は「コトの共 同開発」だから尚更いろんな意見がでる。

どこか「新技術は伝統技術より下」というのが前提で話されて しまっている気がする。 そして何故だか、比較して「だからお客様へのメリット(サービス)が要る」 となる。 受け手に対して「私が〜に〜をしてあげる」的な意見が出るが 「〜してあげる」はどーも心にシックリこない。 【過剰なサービスの提供】で『見返り』を期待しては、どこか 『悪徳商法』のようで苦手である。

欠けているのは『メリット(サービス)』では無く『モノの魅 力』なだけかも知れないと、ふと思うのだけど、、、 『作り手』が出来る事って、そこしか無いと思うんだけど、、

touetsukama
2006/05/12

『三輪空』 〜陶交会LOHAS展考 その壱〜

ロハスをテーマに窯元十数軒でプロジェクトをすすめている。 何かと難しいが、いろんな意見から各窯元の「モノ作り」への 価値観やスタンスが見て取れて面白い。 良くも悪くも、思いもしない意見が出てきたりして、ベンキョーになる。

今では笑える話だけれど【究極のラーメン鉢プロジェクト】の事をふと思い出した。
【究極のラーメン鉢に蓋を付ける案】洗い物が増えるしジャマで却下。【ヘルシーに具だくさんラーメン鉢案】は大きすぎ て持ち辛いし食器棚で場所をとる。【いろいろ作って選んでもらう案】これでは「究極」にも「スタンダード」にもならない。【他を否定して売り込む案】ん〜好きではない。

いろんな窯元から、いろんな意見が出るのは楽しいが「出口」 を探して行き詰まると、 ついつい「入口」までも忘れてしまう。つまり、 「コンセプト」を忘れてしまうのだ。 お出かけでテンションが上がり、靴を履いては「ガスコンロ の火〜消したっけ?」で戻り、 車に乗っては「戸締まりし たっけ?」って家に戻る感じ。

touetsukama
2006/05/07

『日曜日よりの使者達』ノ巻 その壱

陶器市で賑わう有田の町では自転車が活躍し、
いつもと違う有田の景色を見せてくれる。
いつもと違う時間の「速度」もくれる。
ドイツで暮らしていた時は自転車を使っていたし、
たくさんのゆっくりした時間があった気がする。
無精髭を剃って自転車をこいだとき、
顔に当たる有田の空気が「リアル」で心地よかった。

touetsukama
2006/04/03

『アラジンと柳宗理のケトル』
 
桜も咲いたが、まだまだ寒い。
この冬に活躍したのが「アラジンストーブ」と「柳宗理のケトル」です。
アラジンストーブはホンノリ暖まり、青い炎が物凄く美しく、
『時間が止まったように静か』な感じでいい。
ケトルは凄く薄手だからか、素材がそうなのか底が広いからか湯が沸くのが早い気がする。
朝は暖かい珈琲やカップスープもすぐ飲め、夜にはゆっくり燗のついた酒を頂ける。
「いい道具」が寒い日も気分を良くしてくれる。
touetsukama
2006/03/25-26

『タイムトラベル』ノ巻 その弐

長崎県美術館『森正洋展』へ。
森先生には美大の後輩という事もあってか可愛がって頂いた。初期のGデザイン賞の醤油差しから無印良品までがずらりと列び楽しかった。
仕事をドイツか関東でと考えてた頃にお会いし、九州の端で仕事をしても世界で活動できることをその存在から教わった。 同館『CHILLIDA展』 の「時が作りあげていく黒い鉄」も楽しかった。「空間の中の重力の存在」というより、空間の「境目」「傷口」のようだった。何百年か経った建物か仏像のようで、実際のその場(屋外彫刻)に行ってみたくなった。

 
福岡県太宰府の九州国立博物館へ。
常設展が観て体験して、楽しくて時間が足りなかった。日々仕事している「足元/土台」は、こういう歴史と時間が何重にも重なり積もって、その上に立って仕事が出来ている事を忘れないようにしようと想った。
touetsukama
2006/03/24

『タイムトラベル』ノ巻 その壱
 
佐世保の南国食堂『地球屋』さんの勧めで、
映画『美式天然』とその映画監督がアコーデオンを弾く
『くものすカルテット』のライブを観にへ行った。
すごく美しい「時間の流れ」と「絵」と「音楽」の
「いい時間」だった。
古いモノや骨董が特に好きだと言う訳ではないのですが、
「時間の流れ」を大切にする感じは好きである。




touetsukama
2006/03/21

『犬馬難鬼魅易』〜九陶【LOHAS】展考

CO2排出軽減や原料等の有効利用(再利用)を考え、
ひとつの案として『黒磁/こくじ』を提案してみた。
やはり「環境配慮」と「伝統を守る」で意見は割れる。 天然資源の天草陶石が枯渇したらどうするのだろう、、、
黒煙を出しながら「赤松」で何昼夜も窯を焚いた時代から
重油窯、ガス窯に変わった時はどうしたのだろう、、、 『伝統技法』だけを後世に残すのだろうか、、、 「環境と健康に配慮したライフスタイル」をLOHASと呼ぶらしい。
いつまでも有田焼が「生活の中」に残っていてほしいと思う。
touetsukama
2006/03/17

『伝統〜点と線』考

先月、韓国国営TVの取材があった。
スタッフの方から、「韓国の伝統工芸は 美術品としては残っているが、生活の中、食文化の中に残っていない」との事での取材。 伝統というのが『線』として続いていくものなのか、 『点』がたくさん連続して『線』となるものなのか考えてしまうが、 どちらにしろ日本にはまだ、生活の中、食文化の中に 『文化としての陶磁器』が残っててよかったとふと思った。

(画像/最近では親父と並んででロクロをひくのも珍しい)
touetsukama